昨日5日をもって、準備書への意見提出が締め切られました。
各方面から意見が出され、いくつかはウェブ上でも公開されています。
私も意見を出しましたが、その内容については、おいおい掲載していこうかと思います。
とにかくこの準備書、問題が非常に多い。別にリニアに批判的だからそういうまなざしで見ているというわけではなく、本当に雑なんです。問題がいっぱいありすぎて、どこから説明していこうか迷ってしまう・・・。
とりあえず、静岡県版準備書と、その記載内容から見えてきた事業計画そのものにかかわるような大問題について簡単に触れてみようかと思います。
南アルプスを貫く長大トンネル群を掘るにあたり、膨大な残土が発生します。全体でどの程度の量になるのか、いまだに明確でないのですが、南アルプス山中の早川に300万立方メートル、大井川源流に360万立方メートル、小渋川に300万立方メートルが掘り出されるという新聞報道がなされています。
この残土の行き先は、実はまだほとんど決まっていません。わずかに早川流域に1地点、大井川源流部に7地点の「発生土置き場」候補地が挙げられているだけです。
そのうち大井川源流部の候補地がムチャクチャ
1つは、大井川最上流部左岸の、白根南嶺(北岳から南下する尾根)の山腹に長さ2900mのトンネルを掘り、その中にベルトコンベアーを設置し、稜線部の標高2000m付近にある緩傾斜地に捨てようというもの。
別の地点は、大規模な崩壊地からの土砂が分厚く堆積した、大井川の川岸に延びる緩傾斜地。
どちらも「わざわざ土石流の材料を積み上げるようなもの」と、静岡市での審議会において専門家から厳しい批判を受け、エコパーク登録関係の審議会からも撤回するよう意見が出されています。
前者に対する反対意見
後者に対する疑問の声
面積的には、この2地点で大井川源流部7地点の6~7割を占めます。
その処分場候補地が使えなくなると、360万立方メートルの残土のうち大半は行き場がなくなります。
すると-
大井川源流部には、他に残土を置くような平坦地は存在しません。河原を埋め立てるようなことをすれば、それはこれまで調査地に挙がっていなかった場所を改変することになるので、アセスのやり直しに直結します。
南アルプスから運び出すとどうなるのでしょう?
これを行うと、長野県大鹿村のように、1日1000台以上のダンプカーが通行しなければならなくなります。大井川沿いの井川集落における環境破壊はすさまじいものになりますし、大井川沿いの林道を長距離にわたり大改修する必要が出てきます。そしてやはり、これまで影響が及ばないとされていた地域においてアセスのやり直しが避けられなくなります。
アセスをやり直すと、再び1~2年間の調査が必要となります。すると、「2014年着工」というのはムリになってしまいます。
残土の扱いについては、全ての都県で決まっていないようですが、とりわけ南アルプスにおいては、それが解決しない限り、着工することは制度的にも物理的にも不可能なのです。