先日11月5日まで環境影響評価準備書に対する意見が受け付けられ、それについてJR東海が意見概要をとりまとめ、本日(25日)夕方、沿線自治体に送付されました。
これより120日以内に、沿線の市町村ごとに意見を知事に提出し、知事はJR東海に意見を提出することになります。
意見は2539通、意見総数14046件だったとのこと。
この数は、国内の環境影響評価制度としては異例の多さだと思われます。
さて、意見概要とJR東海の見解について、静岡県版だけざったと目を通しましたが…
意見と見解がかみ合っていない
のです。
分かりやすいところで、南アルプスの隆起速度について、「準備書で引用されている資料とJR東海の認識が間違っている」という意見が複数寄せられたのにも関わらず、このほどの「見解」でも、その不適当とされた準備書の内容をそっくりそのまま繰り返し掲げています。
意見「Aに基づく認識は間違っている」
JR東海の見解「Aに基づいてますから問題ありません」
こんな感じです。見解が間違っている以前に、やりとりがかみ合っていません。
あくまで私の推測ですが、あらかじめ寄せられる意見を想定しておき、それに対する回答もあらかじめ用意してあったのではないのでしょうか。だから、見当違いな見解を示してしまっている…。
そういえば、「南アルプスの自然環境は貴重なものである」という意見に対し、なんだか開き直りのように「過去の電源開発で15㎞の用水トンネルも掘られているし~」みたいなことも書かれています。
おいおい、比べ物にならないでしょう!
たしかに畑薙第一ダム以北には発電用水路トンネルが、総延長25㎞にわたって掘られています。
しかしリニアの建設工事では、トンネル本体に並行して掘られる先進ボーリング坑だけで長さ25㎞! これだけで中部電力が過去に掘った発電用水路の総延長に相当します。これに断面積10倍程度の斜坑と作業用道路トンネルが総延長数十㎞(詳細不明)、そして断面積25倍程度の列車の通るトンネルが掘られるわけです。そして360万立方メートルの残土を山中に捨てるわけで、環境に与える影響は全く比べ物になりません!!
「『道路マニュアル』を参考にしたから問題はないと認識している」というような表現も目立つけれども、そんなものを知っている人はまずいないし、方法書の段階でそんなものに準拠するという話は一言も出ていなかったし、それが南アルプスのような場所にも通用するかもわからないわけで、何の回答にもなっていません。
そして相変わらず「適切に対策をとります」という具体性に欠けた表現だらけ。
その他細かいことを挙げればキリがありませんが、そのうち準備書の問題点と合わせて触れようかと思います。
準備書への意見は、一般の人々が事業計画に対して関わることのできた、最後の機会でした。それに対してマトモに回答していないということは、この計画に一般の人々の考えは全く反映されない-するつもりもない-ことを意味してしまいます。
同時に静岡県版準備書へは、静岡県内の大学教授、NPO、アマチュア研究家など南アルプスの自然環境に関する専門家の声が多数寄せられています。それに対してもマトモに返答していないということは、南アルプスの自然環境など重要だと思っていないことの現われです。