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Channel: リニア中央新幹線 南アルプスに穴を開けちゃっていいのかい?
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形ばかりの審議でこんな重大なことを決めてよいのかな?

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前回、「お役所とエラい先生方が話し合ってご決断なされたことは、下々のものには絶対にくつがえすことはできない」という日本の不思議な制度(?)について書きました。
 
「リニア計画はJR東海による”民間事業”だから官僚の意図するところには当てはまらない。JR東海の意向通りに計画を認可するのは審議会として妥当なあり方、結論だ」
「民間事業なんだから国・官僚はあれこれ言う立場でない」
という見方もあるかもしれませんが、けっしてそうとは思えません(Yahoo!コメントや知恵袋なんかにはこの手の声が多いようで)。
 
しかしですねえ~、リニア計画そのものが純粋な”民間事業”と呼べるものなのでしょうか?
 
私としては以下のような点から、純粋な”民間事業”とは言いがたく、半官半民のようなものだと思います。
 
●リニア中央新幹線計画は、全国新幹線鉄道整備法という法律に基づいて建設される。同法では、新幹線の計画そのものは広く国民生活の発展に寄与することを目的とした国家プロジェクトと位置づけられており、簡単に民間に丸投げできるような性質のものではないはずである。
 
難解だしネット上では読みづらいけれども、一応、法律の条文を掲載しておきます。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S45/S45HO071.html
【全国新幹線鉄道整備法 第一条】
この法律は、高速輸送体系の形成が国土の総合的かつ普遍的開発に果たす役割の重要性にかんがみ、新幹線鉄道による全国的な鉄道網の整備を図り、もつて国民経済の発展及び国民生活領域の拡大並びに地域の振興に資することを目的とする。
 
●そもそも新幹線の建設計画は国土交通大臣(つまり官僚)が決めるものである。東京-名古屋-大阪に超伝導リニアの高速鉄道を建設するというリニア中央新幹線構想ないし第二東海道新幹線構想は、田中角栄「日本列島改造論」が発端にあり、昭和48年に国が基本計画を定めたもの。本質的には国家プロジェクトである。
【全国新幹線鉄道整備法 第四条】
 国土交通大臣は、鉄道輸送の需要の動向、国土開発の重点的な方向その他新幹線鉄道の効果的な整備を図るため必要な事項を考慮し、政令で定めるところにより、建設を開始すべき新幹線鉄道の路線を定める基本計画を決定しなければならない。
 
●全国新幹線鉄道整備法第五条によって、新幹線鉄道を建設する際の調査は独立行政法人の(国交省所管)もしくは国交省の息のかかった法人がおこなうことと定められている。
【全国新幹線鉄道整備法 第五条】
 国土交通大臣は、前条の規定により基本計画を決定したときは、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構その他の法人であつて国土交通大臣の指名するものに対し、建設線の建設に関し必要な調査を行うべきことを指示することができる。基本計画を変更したときも、同様とする。
(参考)
【独立行政法人通則法 第二条】
 この法律において「独立行政法人」とは、国民生活及び社会経済の安定等の公共上の見地から確実に実施されることが必要な事務及び事業であって、国が自ら主体となって直接に実施する必要のないもののうち、民間の主体にゆだねた場合には必ずしも実施されないおそれがあるもの又は一の主体に独占して行わせることが必要であるものを効率的かつ効果的に行わせることを目的として、この法律及び個別法の定めるところにより設立される法人をいう。
【独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構法 第三条】
独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構は、鉄道の建設等に関する業務及び鉄道事業者、海上運送事業者等による運輸施設の整備を促進するための助成その他の支援に関する業務を総合的かつ効率的に行うことにより、輸送に対する国民の需要の高度化、多様化等に的確に対応した大量輸送機関を基幹とする輸送体系の確立並びにこれによる地域の振興並びに大都市の機能の維持及び増進を図るとともに、運輸技術に関する基礎的研究に関する業務を行うことにより、陸上運送、海上運送及び航空運送の円滑化を図り、もって国民経済の健全な発展と国民生活の向上に寄与することを目的とする。
 
●建設のための調査だけでなく、山梨実験線における超伝導リニアの研究・実験にも鉄道建設・運輸施設整備支援機構がかかわっている。
●そもそも超伝導リニアの研究・開発は国鉄が始めたもの。1988年に山梨実験線の建設を打ち出したのは当時の石原慎太郎運輸大臣。
●そんなわけで、山梨実験線関連だけでも過去20年間で約1300億円の税金が投入されている。
●国鉄から発足したJRという企業の成り立ちからして国と無関係であるはずがない。
 
当時の運輸省が、リニアの実験・開発は必要なことと判断して鉄道建設・運輸施設整備支援機構に実験線の建設と実験、そして調査をおこなわせ、日本国有鉄道(国鉄)から変化したJR東海がそれを元に自費で実現すると表明するにいたったわけですので、制度的にも国は無関係とは言えないと思います。
 
また、建設の円滑な遂行のために、建設主体つまりJR東海には、国土交通大臣を通じて他人の権利を侵害しうる、強い権限が与えられるようです。
 
【全国新幹線鉄道整備法 第十条 第1項】
国土交通大臣は、前条第一項の規定による認可に係る新幹線鉄道の建設に要する土地で政令で定めるものについて、当該新幹線鉄道の建設を円滑に遂行させるため第十一条第一項に規定する行為の制限が必要であると認めるときは、区域を定め、当該区域を行為制限区域として指定することができる。
【第十一条 第1項 抜粋】
 前条第一項の規定により指定された行為制限区域内においては、何人も、土地の形質を変更し、又は工作物を新設し、改築し、若しくは増築してはならない。
【全国新幹線鉄道整備法 第十二条】
国土交通大臣の指名を受けた法人若しくは建設主体又はその委任を受けた者は、新幹線鉄道の建設に関する調査、測量又は工事のためやむを得ない必要があるときは、その必要の限度において、他人の占有する土地に立ち入り、又は特別の用途のない他人の土地を材料置場若しくは作業場として一時使用することができる。
2  前項の規定により他人の占有する土地に立ち入ろうとする者は、あらかじめ、当該土地の占有者にその旨を通知しなければならない。ただし、あらかじめ通知することが困難である場合においては、この限りでない。
3  第一項の規定により建築物が所在し、又はかき、さく等で囲まれた他人の占有する土地に立ち入ろうとする場合においては、その立ち入ろうとする者は、立入りの際、あらかじめ、その旨を当該土地の占有者に告げなければならない。
(中略)
6  第一項の規定により特別の用途のない他人の土地を材料置場又は作業場として一時使用しようとする者は、あらかじめ、当該土地の占有者及び所有者に通知して、その意見をきかなければならない。
7  
土地の占有者又は所有者は、正当な理由がない限り、第一項の規定による立入り又は一時使用を拒み、又は妨げてはならない。

かなり強い権限が与えられるわけで、こうした権限を形ばかりのいい加減な形ばかりの審査で簡単に認めてしまってもいいものなのでしょうか。
 
また、この条項により、自然公園法や保安林制度など土地開発規制と矛盾する事態が生ずる可能性もあるように思われます。現在、南アルプス周辺や岐阜県南東部の小湿地群など、特に自然保護が求められる地域において、環境省が国立・国定公園区域を拡張する方針を打ち出していますが、骨抜きになるおそれはないのでしょうか。同じく岐阜県南東部のウラン鉱床において、ウランを含む残土が発生した場合にも適応されるのか…?
 
 
 
 
リニア計画は国と密接に関わっているうえに、建設主体に強い権限を認めるわけですから、国による認可手続きは慎重かつ民主的なものでなければならないと思います。
 
それが無理であるならば、国民に開かれた形で、客観的な立場で議論できる委員を選び、多様な意見に耳を傾ける姿勢を持たなければならないはずです。それができていれば、何も文句はありますまい。
 
ですが全くできていないということは、やはり批判されてしかるべきだと思います。
 
何かしら裏でおいしい思いをする一団があるとか、
ひたすらにスピードアップに情熱を燃やす技術者集団があるとか、
どこかから圧力を受けているとか、
 
そういった水面下のドロドロしたものが審議会のあり方-つまり官僚の書いた筋書き-を決定しているのではないかと勘ぐりたくなってしまいます。

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