静岡新聞の夕刊一面に大きく掲載されているのでご存知の方も多いかと思いますが、リニア中央新幹線環境影響評価準備書に対する静岡市長意見が、県知事に出されました。http://www.city.shizuoka.jp/deps/kankyou-soumu/shichoiken.html
静岡県でリニアの工事を計画しているのは静岡市内だけなので、静岡市の意見は県の意見を代弁しているともいえます。
「○○に配慮すること」
「モニタリングをすること」
など、着工ありきのありきたりな意見だな…と思って眺めてましたが、後半部分に
「生息確認のある重要種については必要な調査を実施すること」
「扇沢源頭部での残土処理は回避すること」
「燕沢付近の残土処分場について環境影響評価をおこなうこと」
「斜坑等の掘削及びそれに伴う発生土処理による自然環境への影響を低減するため、施行上の安全を確保した上で、斜坑等の計画について再検討すること」
「必要な場合は計画の見直しも含めてユネスコエコパークの登録実現を積極的に支援すること」
とありました。
扇沢源頭部での残土処理計画は、12/8のブログ記事で指摘した「標高2000m!天空の残土捨て場」のことです。道路トンネルを掘ることにより数十万立方メートルの残土をわざわざ増やし、その何倍もの残土を谷底から600mも高い山の上の地すべり地帯に捨てようという、メチャクチャな計画ですが、これに「ノー!」が突きつけられました。
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この計画にはノーImage may be NSFW.
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規模や事業計画からみて、JR東海としてはここに少なくとも100万立方メートル(3割弱)を捨てようとしていたと思われますが、その計画が明確に否定されたわけです。
また、二軒小屋南側の大井川川床に広がる土石流堆積地も残土捨て場候補地に挙げていましたが、規模や構造に注文がついたうえ、環境影響評価をやりなおすことが求められました。どういうわけか環境影響評価をおこなっていないので、当然です。
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アセスやりなおし!
というわけで、おそらく半分近い残土の行方が定まらなくなりました。事実上、残土捨て場の選定作業および環境影響評価のやり直しが必要となります。JR東海が、何の協議もなく一方的に「南アルプス山中に残土を捨てる」と言い出したわけですから、こうなることは当然といえば当然です。
残土捨て場が決まらない限り、南アルプスでのトンネル工事をおこなうことはできません。
それから、方法書段階で保全対象にあげておきながら現地調査で”見つからなかった”として保全対象から外された多くの動植物について、再調査を求めています。生物相手の調査ですから、適切な時期にならねば何もできません。
昨日は日本経済新聞が「リニア新幹線建設、今夏から順次着手」なんて記事を出していたようですが、本当に沿線事情を取材して書いたのでしょうか?
さて、最近、南アルプスの工事計画についておかしな点に気付きました。
先週末(?)、昨年12月26日に開催された、静岡県の環境影響評価審査会の資料が公開されました。議事録はまだのようです。
ここにある「資料3」の中で、JR東海がはじめて残土発生量の試算について触れています。
よく読んでみると…
?
ヘンなんですよ。その資料3から該当部分をコピーして貼り付けます。
赤く囲った部分に、「工事用道路(トンネル)8500m」とあります。
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静岡県での審議資料より
右下の青枠については後日触れます。
準備書を見ると、西俣の斜坑口から東俣までと、そこから東の稜線上の残土捨て場にむけて2本のトンネルを計画していることになっています。ちなみに大型車両が通行するだけでなく、残土運搬のベルトコンベヤも設置するそうです。
これです。
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準備書よりコピー
拡大するとこんな感じ
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国土地理院地形図閲覧サービスうぉっちずよち複製・加筆
右上の残土捨て場候補地が、市長意見で否定されたところ。沢Aが扇沢。
地図上で長さを調べてみると、
西側のトンネル…約2150m
東側のトンネル…約2950m
東側のトンネル…約2950m
合計約5100m
ん?
あと3400mはどこ?
準備書のどこを見渡しても、この2本以外に道路トンネルを掘るなどと書いていません。
ひょっとしたら道路トンネルを複線で掘るのかとも思いましたが、それなら合計12000mになります。
もしかして5100mのうちトンネル区間は4400mで、それが複線になるとか…? でも、それなら途中の地上区間で動植物等の調査を行わねばならなくなりますが、アセスではそんなことをしていないので違います。
蛇行している林道をショートカットするのかとも思いましたが、そもそも「舗装や崩土除去など”最低限”の改修」と書かれているので、もし林道改修でトンネルを掘るのなら、準備書がウソということになります。
ナゾなのです。
準備書でも明らかにしていない、所在地不明なトンネル工事を計画している?
まるで幽霊のような実態のないトンネル計画なのです。
どこに何をつくるのか分からない(公開していない)状態で環境影響評価などしても、何の意味もないと思うのであります。